開場後に来場者は広い空間に案内され、空間全面を覆う巨大なスクリーンにミュシャの作品や彼の過ごしたチェコやパリの景色がライブ映像となって投影される。作品がデジタル化されているのと映像の動きが激しいためじっくりと鑑賞するのには不向きだが、空間全体に数々の作品が展開される様子は圧巻だ。用意されたクッションに座って鑑賞するため、歩いて鑑賞する必要がないのは楽だと言えるかもしれない。
　映像の上映が終わると後半の展示コーナーに案内され、一般の美術展と同じように入場者が歩いて展示を鑑賞する形となる。ミュシャの半生や作品にまつわるエピソードが紹介されており、ミュシャのアトリエの匂いを再現したフレグランスなどイマーシブ型展覧会ならではの体験もできる。ミュシャの作品に影響を受けた他の作者の作品も紹介されており、ミュシャ本人だけでなく“ミュシャ風”の作風を好む人にとっても満足できる内容だろう。
　注意点としては、映像は面ごとに違う映像や文章が投影されるため、全面の映像をくまなく楽しむためには頻繁に左右に首を振る必要がある。また、実物の作品は一切展示されていない。しかし、イマーシブ型展覧会の名の通り、まさに身体全体でミュシャの作品に没入する体験ができると言えるだろう。