冒頭の鳥文斎栄之「隅田川図鑑」から素晴らしく、旅情がそそられる。大河ドラマのロケセットも雰囲気があって、たちまち「江戸」の世界に引き込まれた。蔦重が活躍したのは20年あまりにすぎないが、数多くの登場人物が絡み、さらに田沼時代から寛政の改革への移り変わりも反映して、中身は濃厚で見ごたえがある。4時間かけて回ったが、展示品をじっくり見ていると時間がいくらあっても足りない。会場を出たところに、当時の吉原か日本橋をVR体験できるコーナーがあり、最後まで蔦重のいた江戸の雰囲気を満喫できる。さらに「浮世絵現代」も「蔦重」のチケットで入場できるが、こちらも見ごたえがあって見ないのはもったいない。中にはウィットがきいて思わず笑えるような漫画家の作品もあり、楽しめる内容。「新版画」などの特集展示も見て、ほぼ1日(7時間半)、東博で充実した時間を過ごすことができた。