mute さま

muteさまの口コミ

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 室内画はキャンバスの限られた空間内に描く情報を取捨選択し、それらをどう配置するかが肝となる点で定型の美を究める短歌に近い。扱える情報も種々様々で、生活を営むプライベートな空間であるのと同時に、ゲストを招き入れる社交の場にもなる室内には公私に関わる情報が入り混じっている。ゆえにその描き方次第で①家族の理想像をドラマチックに描くこともできれば、②ある家族の実情を通して社会風刺を鋭く行うことだってできるのが室内画の特徴。その切り口に、画家のセンスや技術の良し悪しがはっきりと現れます。実力を知るにはうってつけの一枚です。
 そんな室内画にスポットを当てれば「印象派」という言葉に隠された画家の職人然とした姿が浮かび上がるのは必然。彼らが風景の中に見出した「美」の淵源も、部屋の中に描かれたありとあらゆるものに現れている。印象派を深く知るのにこれほど適したジャンルは他にありません。
 そこに注目したのが現在、国立西洋美術館で開催中の『オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語』です。五つに分けられた展示スペースは室内から外景へと通じる構成が取られており、当時の画壇を支配していたアカデミックな風潮に風穴を開けた異端児たちの確かな足取りを非常に分かりやすく、かつ感動的に教えてくれます。ここまで描ける彼らだったのか!という驚きは、それでもなお反旗を翻すように挑んだ「印象派」の画業の偉大さに気付くきっかけとなり、印象派を代表する風景画の見方を非常にいい方向に改めさせてくれます。
 とてもいい企画展だったので強くお勧めします。興味がある方は是非。

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