kuma さま

kumaさまの口コミ

4 / 5とても良い

ユトリロを代表する白亜の建物や風景をユトリロの人生と対比させながら観ていく展覧会。アルコール依存症であったことは聞いていたがとてもハードな画家人生だった。戦争の暗い時代、だらしなく自分本位でありながら重めの愛で囲い込む母親。サティやルノアールなどすばらしいアーティストを身近に生活することもあれば、城に軟禁されて絵を描く生活をすることもあった。当時の精神病院には陰鬱なイメージがあるが、そこで何度も入退院を繰り返し、自分や環境を見つめ直したのだろうと思う。白さのなかにどれほどの重みが込められているのか。51歳で結婚し、ポップな画風にシフトしていき70代まで生きたが、母や妻と愛がある関係性のようでいながらミソジニーを表現し、女性に対する憎しみや許し難さは一生心の大きな部分を占めていたようだ。
ナイフで手早く絵の具を塗る画風であるが、建物のラインは真っ直ぐで正確であり、ナイフによる着色の下には美しく調和のとれた下地がのぞいている。奇跡のようなバランスはユトリロが人生をかけて積み上げてきたものから滲み出たものなのだろう。

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