c3d さま

c3dさまの口コミ

5 / 5素晴らしい!

- 印象派の影響・技法の幅広さはもちろんのこと、背後にあった若年アルコール依存症・精神病、母親ヴァラドンへの満たされない依存的な愛、絵画への当初肯定的でなかった向き合い方などからくる全体を通底する寂しさや苦しさ、淀み、こだわり。人を描かず、とにかく建物、建物、建物。激しくはなく辛すぎはしないものの、全体的に深い悲しみ、侘び寂びに近い情感に溢れており、受け止めるのが厳しいほどに大きな負・陰の感情の美しさを与えてくる。都市の歪み、近代の歪さすら訴えてくる建物の描き込みの鋭さと構図の再構成。テクニカルでありながらそこに流れる悲壮の美学。これが、ユトリロが好きな理由だったんだな、という再発見に。
- 白の多彩な表現が時代にマッチして次第に早く名声を得ていたこと、そして軟禁生活を通じて、画風が一変していたというのは驚いた。あの悲しみの独自性がなくなってしまったのは残念な一方、喜びが画面に現れてきて報われてよかったなぁという気持ちもあり。画家1人の一生を感じられる良い展示会でした。

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