みげそめ さま

みげそめさまの口コミ

4 / 5とても良い

ユトリロと聞けばしんとした白い建物の絵が思い浮かぶ。病気のリハビリ?のために絵を描いていたと聞いたことがある。そして、「絵ハガキを見ながら描く」というのも、他の展覧会で見たことがある。

そんな事前知識から線の細い、クールな画家を想像していたが、本展を見て、実像はとても人間らしい画家だとわかった。

白い建物の絵は画家人生の中期に位置する「白の時代」と呼ばれる期間で、本展ではその前の、印象派(ピサロ、シスレー)に影響を受けた期間と、円熟期〜晩年の「色彩の時代」と呼ばれる期間の3つに分けている。

奔放な母親(画家でもあった)の影響もあり、幼い頃からアルコールを摂取し始め(本展では具体的な数字は書かれていないが、軽く調べてみると十歳という数字が挙がってくる。十歳!)、17才でアルコール中毒と診断される。

酒から気をそらすのに、集中力のいる絵画が良いと言われて、絵を描き始める。

特殊である。ほとんど全員の画家の幼少期は「絵が好き」というところからはじまるものだ。

それでも印象派に影響を受けて見事な絵を描く初期。

そこから「白の時代」でいわゆる「ユトリロ」になる。

さらにそこから「色彩の時代」になると聞くと、例えばルドンみたいに「結婚して子が生まれ、色彩を獲得」のようなストーリーを思い描いてしまうが、そういうわけでもないのがユトリロの数奇な人生である。

「◯◯といえば□□」という、いわゆるベタな想像がユトリロには当てはまらない。

飲酒癖に母親の影響はあるだろうが、明らかに才能を引き継いでいるし、ユトリロ自身も母を敬愛している。単純に「親ガチャ失敗」とは言えない。

「白の時代」で作品が売れ始めるが私生活では悩みが多い。

そして、「色彩の獲得」へ至るときの、ユトリロの制作環境は……

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本展では「ベタじゃない、ユトリロ」を知ることができる。

以前、ユトリロと聞いて思い浮かべていたあの白い建物の「白」からして、卵や、鳥のフン(!)などを混ぜて、独特な白を作り出していたのだそうで、むしろ「ベタじゃなさ」の象徴だったりするのだ。

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