美術館としてずいぶん良くなったと思います。照明、動線等。

ゴッホ展の企画そのものは良かった。
むしろ良すぎて、私がなぜゴッホを“好きになれないのか”が
はっきり整理されてしまったほどだ。
美術的に優れていることと、
作品を好きになれるかどうかは別問題だという当たり前の事実を
改めて突きつけられた気がする。

それにしても、これだけ多くの“ゴッホによる模写”を一気に見せる展覧会は珍しい。
正直、これを見てゴッホを好きになる日本人は少ないだろう……と最初は思った。
しかし、少し考えてみて気づく。

そもそも多くの日本人は、他の画家の本物をあまり見ていない。
見ようとしないし、見る機会もない。

だから“比較する土台”が存在しないまま、
いきなり“ゴッホの本物”に出会ってしまう。
その結果として、
「やっぱりゴッホってすごいらしい」というイメージだけが独り歩きし、
ゴッホ好きが増えていく。

なんというか——
皮肉というより、構造的な誤解の積み重ねを見せつけられた気分だった。