のんさまの口コミ
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エレベーターの扉が閉まり、静かに上へ、上へと運ばれていく。 耳がふっと遠くなったその瞬間から、もう日常は足元に置いてきていたのだと思う。 扉が開いた先に広がっていたのは、言葉が追いつかない世界だった。 街は「見下ろすもの」ではなく、「抱きしめるもの」に変わっていた。 ビル一つひとつに、人の生活があって、灯りの数だけ物語がある。 小さく見える車の流れは、今日も誰かを家へ、誰かを夢へ運んでいる。 遠くには隅田川が静かに光を映し、 この街が長い時間をかけて生きてきたことを、何も語らずに教えてくれる。 高い場所に立っているのに、不思議と怖さはなくて、 胸の奥がじんわりと温かくなった。 それはきっと、「自分もこの街の一部なんだ」と 静かに肯定されたような感覚だったから。 悩んでいたことも、焦っていた未来も、 ここから見ると、ちゃんと進める距離にある。 「大丈夫、ちゃんと前に進んでる」 街の光が、そう言ってくれている気がした。 展望デッキは、ただ景色を見る場所じゃない。 自分の今を、やさしく見つめ直す場所だった。 帰りのエレベーターで下へ降りながら、 もう一度、地上で頑張って生きようと思えた。 あの高さで感じた震えは、 これからの日々を支えてくれる、確かな感動として 今も心の奥で、静かに輝いている。