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上野・国立科学博物館「大絶滅展」を見て

上野の国立科学博物館で開催中の「大絶滅展」を見てきた。
正直に言えば、これは単なる科学展示ではない。
人間中心の世界観を静かに、しかし決定的に破壊する展示だった。

地球史において、生命は少なくとも五度、
全体の大半が失われる規模の大量絶滅を経験している。
いわゆる Big Five である。
その原因は隕石衝突、火山活動、気候変動、海洋無酸素化など、
いずれも物理・化学・地質学的過程の帰結だ。
そこに「意味」も「目的」も「配慮」も存在しない。

この事実が突きつけるのは、
「生命は守られていない」という冷徹な現実である。
恐竜ですら滅びた。
脊椎動物ですら、かつては存在しなかった。
人類が今ここに存在していることは、
何かが選ばれた結果ではなく、
条件が一時的に整っているだけの出来事にすぎない。

この視点に立つと、
人類の存続や発展を前提に組み立てられてきた
宗教や目的論は、
地球史スケールでは極めて局所的な物語になる。
神の存在が否定されるのではない。
神を想定し、語り、必要とする主体そのものが、
地球史的には不安定だという事実が露わになるだけだ。

もし人類が絶滅すれば、
神を語る言語も、意味を問う思考も、
価値を保存する文化も同時に失われる。
そのとき神は「否定」されるのではなく、
成立条件ごと消失する概念になる。

大量絶滅の反復は、
「世界は人間のために存在していない」
という事実を、思想ではなく自然史として示している。
世界は意味のために存在しない。
目的のために存在しない。
ただ在り、変化し、
時に生命を一掃する。

それでも人間は意味を作る。
だがそれは世界の性質ではなく、
世界の内部で生じる一つの状態にすぎない。

「大絶滅展」は、
この事実を感情的に突きつけてくる展示ではない。
ただ淡々と、地球がそうであったことを示す。
その静けさこそが、
人間中心の幻想を最も強く揺さぶる。

これは娯楽ではない。
世界観を書き換える展示だった。

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