アソビュー!ASさまの口コミ
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鳥獣戯画には、用紙の錯簡等による画の連続性確保や、画の強調のため、後年加筆・補筆された部分が散見されているのは既知の通りである。 鳥獣戯画丁巻は、おおらかな筆致に速いスピードで筆を走らせ乱雑に見えるが、4人の強装束最奥の貴族顔筆から、本来の作者の技量の高さが伺えるといった説明があった(NHKの放送「日曜美術館」でも同様)。しかし、最奥の貴族の強装束は手前3人の強装束とは筆致が異なり、最奥の貴族は後年加筆されたと考えるのが妥当であろう(強装束の左肩のラインの描き方・裾の描き方・笏の形に注目)。私が思うには、恐らく手前の木引き場面との連続性を確保するため、後年加筆したのではなかろうか。 また、鳥獣戯画甲巻の兎を投げ飛ばしたカエルの口から吐き出されている勝利の雄叫びのような気勢も、16世紀までに行われた後世の加筆であると私は考えている。このカエルの気勢は、おおらかな筆致ながら粗雑に描かれているが、前後の画とは異なる細筆と墨を用いて10回程度線を書き足して表現している。他の動物に対し、このような丁寧な線画は見当たらない。似た表現事例として、カエルの本尊にお祈りをしている僧侶の猿の気勢は貧弱な表現だ。かえって、兎を投げ飛ばしたこのカエルの気勢が、何か甲巻全体の他の動物たちの表現手法と筆勢の流れを崩しているように感じられ残念である。カエルの気勢を消し去っても、甲巻は立派に全体のバランスを保つことが出来るし、無音の中で進展している自然な絵物語の流れを再発見できる。模写から、16世紀後半には描かれていたカエルの気勢は当初描かれていなかったと考え、伝承の中で僧侶の猿の気勢を参照したか、または猿の気勢と同時に加筆されたと考えたほうが妥当ではなかろうか。おおらかな筆致で長編をまとめられているだけに、研究はまだまだ必要だ。
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特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」無料日時指定券 【会場:東京・上野 東京国立博物館 平成館】
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