3104_fukukura さま

3104_fukukuraさまの口コミ

5 / 5素晴らしい!

いまや様々な美術館や博物館で鑑賞出来る浮世絵。西洋の印象派の絵画や日本の近代絵画などと比較すると少し地味なイメージがあるかもしれません。しかしながら、表情豊かな人物と躍動感溢れる動きの描写、江戸時代の日本風景を写し出す精緻な表現は人々を惹きつけます。また、絵の構図、色使いや線の重ね方には工夫が見られ、絵自体に四季や時間のうつろい、天候、旅ゆく人々の心情などが盛り込まれており、見る者の心に安らぎを与えてくれます。 今回の展覧会で感心したのが北斎の挿絵。浮世絵のイメージしかなかった北斎が、普通に現代の漫画や小説に載っていてもおかしくないような挿絵を描いていたことに驚かされました。色を使わず、線画だけのタッチで迫力のある挿絵を描けるのだから、やはり卓越した技術をもった絵師なのだということが分かります。 また、北斎の富嶽三十六景を欠けることなく全て鑑賞出来るたのも貴重な体験でした。全ての作品を見てみると、構図や色使いなどに、北斎が理想とする絵への強い探求心をうかがい知ることが出来ます。全てを鑑賞すれば、なぜこの作品が日本だけでなく世界中の人々を魅了し続けるのかというのもきっと分かるはずです。 さて、この展覧会の本来のテーマなのですが、なぜ北斎と広重なのか。最初は人気と知名度のある絵師を特集したからだと思っていました。しかし、展覧会内の解説や実際に絵を見ていると、最初から絵師として活躍し名声をあげていった北斎と、北斎とは異なり絵師は副業のようなもので、たゆまぬ努力と挑戦によって実力を磨き上げていった広重との対比、またその北斎に対して、尊敬の念をいだきながらも対抗心を燃やしていた広重の思いなど、時代を超えた二人の関係性を深く知ることが出来ました。 浮世絵に関する展覧会は今後も様々な美術館等で開かれる予定なので、今回特集された北斎と広重以外の絵師にも注目して見てみたいと思いました。