秘蔵の宝物がズラリ!特別展「春日大社 千年の至宝」東京国立博物館現地レポート!

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2017年1月17日(火)から3月12日(日)まで、上野・東京国立博物館 平成館で特別展「春日大社 千年の至宝」が開催されます。奈良の春日大社の貴重な宝物や名品を東京にいながらにして見られる、またとない機会です。asoview!編集部が取材してきましたので、見どころや詳細についてレポートします!

春日大社の貴重な古神宝を、かつてない規模で展示!

春日大社は、奈良時代のはじめに国家の平安と国民の繁栄を祈願するために創建された神社で、今年で創建1249年を数えます。時の天皇、貴族、武家など当時の最高権力者が、自分の持っているものの中で最高のものを奉納し、祈りを捧げる場でもありました。京都では応仁の乱の際に貴重な宝物がほとんど失われてしまいましたが、春日大社には平安時代の技法で創られたものが1,000年以上の長きに渡り伝えられてきました。中には春日大社にしか残っていない技法も数十点あると言われています。

春日大社では、20年に1度「式年造替(しきねんぞうたい)」と呼ばれる社殿の建て替え・修繕が行われます。平成28年には60回目の式年造替を迎えました。この大きな節目に、社外ではめったに拝観できない春日大社伝来の貴重な古神宝や、神々への祈りが込められた選りすぐりの名品を、かつてない規模で展示するのが今回の特別展です。

出展数約250点、そのうち100点近くが国宝または重要文化財に指定されているという、まさにお宝だらけ!気になる内容を早速見ていきましょう。

第1章 神鹿の森

武甕槌命(たけみかづちのみこと)が鹿に乗り、常陸国鹿島(ひたちのくにかしま)から春日の地に降り立ったことが春日大社のはじまりと伝わっています。そのため奈良では鹿は神の使い、「神鹿(しんろく)」と呼ばれ大切にされてきました。この章では、神々しくも親しみにあふれる「神鹿」に関わる美術が展示されています。

春日神鹿御正体
南北朝時代 14世紀 京都・細見美術館

まず展示室に入ると迎えてくれるのは、かわいらしい鹿。神が春日大社に降り立ったエピソードを伝える「鹿島立神影図」を立体的に表現したもので、平安時代以降さかんに制作されたのだそうです。キリリとした顔はまさに神の使いという言葉がぴったりと当てはまります。

鹿島立神影図(かしまだちしんえいず)
南北朝~室町時代・14~15世紀 春日大社 通期展示

武甕槌命(たけみかづちのみこと)が鹿に乗り、春日の地に降臨した様子を描いています。後小松天皇が奉納したものと伝わります。背後には御蓋山と月の昇る若草山が描かれています。今の春日大社と変わらない光景です。

鹿図屏風(しかずびょうぶ)
江戸時代・17世紀 春日大社 通期展示

画面に収まりきらないほどの大きな金屏風です。雌鹿、雄鹿の群れが描かれていて、なかにはかわいい子鹿の姿もあるので、じっくりと見て見つけてみてください。イキイキとした鹿達は、今にも屏風から飛び出してきそうです。

実物大の社殿を再現!

第1章の終わりには、なんと実物大で春日大社第二殿が再現されています。

左右の絵は実際に春日大社の壁に描かれていたものです。式年造替に伴い、役目を終えた絵画が今回ここに展示されています。通常は一般の参拝者はこの社殿をそばで見ることはできません。貴重なこの機会にじっくりと拝見しましょう。

第2章 平安の正倉院

春日大社には神々の調度品として奉納された古神宝が数多く伝わります。中でも平安時代の貴族文化を伝える品々が数多く、「平安の正倉院」とも呼ばれるほどです。ここでは主に平安時代の雅な品の数々が展示されています。

展示室の左側には「本宮御料」、右側には「若宮御料」と呼ばれる奉納品が展示されています。

平胡簶(ひらやなぐい)(若宮御料のうち)
平安時代・12世紀 春日大社 展示期間:1/17(火)~2/12(日)

平胡簶とは矢を差し、携帯する用具です。背板両面には貝を用いた螺鈿細工で、尾長鳥や宝相華文が表現されています。左大臣となった藤原頼長(ふじわらのよりなが)の所用品と伝わるものです。日本史を習った人ならこの名前にピンとくる人もいるのでは。

金地螺鈿毛抜形太刀(きんじらでんけぬきがたたち)
平安時代・12世紀 春日大社 展示期間:1/17(火)~2/19(日)

今回絶対に見るべき一品がこちら!まばゆく輝く黄金の太刀です。柄や鍔などの金具は金メッキではなく、純金を用いています。さらに鞘には金粉を蒔き、貝を使った螺鈿細工で雀を追う竹林の中の猫を表現しています。現代でも再現するのが難しいほどの細かい技法でつくられています。

そのほか、銅鏡や鏡台、弓矢など、平安貴族たちの美意識や、大切にしていたものが伺える展示となっています。

第3章 春日信仰をめぐる美的世界

貴族をはじめとする多くの人々が春日の地に参詣し、祈りを捧げてきました。神々の姿は本来目に見えないとされていますが、神と仏が一体であるとする「神仏習合」の思想、もしくは神は仏が仮の姿で現れたとする「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」という考え方が広がります。こうして神々はさまざまな造形に現されていきました。

文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)および侍者立像(じしゃりゅうぞう)
康円(こうえん)作 鎌倉時代・文永10年(1273) 東京国立博物館 通期展示

春日大社の境内南側に鎮座する祭神、若宮。若宮は文殊菩薩と同体と考えられていました。神と仏が一体となったことを表す例のひとつです。春日大社に隣接する興福寺に伝来したものです。

春日宮曼荼羅(かすがみやまんだら)
鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館 展示期間:1/17(火)~2/12(日)

春日大社に日常的に詣でられない人のために編み出された礼拝画が、春日宮曼荼羅です。春日大社の社殿を中心に、画面上部に御蓋山(みかさやま)、春日山、若草山が描かれています。聖地・春日野かすがのを一望にする礼拝画の大作です。

曼荼羅はこのほかにも数多くつくられています。ここに描かれている春日の森、社殿、山の様子は今に至るまでほとんど変わっていません。

春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)(春日本)
巻十二(部分) 江戸時代・文化4年(1807) 春日大社 通期展示(場面替有)

春日の神々の霊験を描く全二十巻の絵巻です。もともと鎌倉時代に制作された絵巻物ですが、多くの写しがつくられています。春日本と呼ばれるこちらは江戸時代、松平定信の指示で制作されました。鹿に囲まれている牛車の中には、春日三宮が化身した地蔵菩薩の姿がチラリとのぞいています。

この他にも春日の神に関連した様々なエピソードが描かれています。神様に地獄を案内されるエピソードなど、クスリと笑ってしまうものもありますよ。

第4章 奉納された武具

鎌倉時代以降は武家の社会になり、春日大社には多くの武具が奉納されました。春日大社に伝わる国宝の甲冑や刀剣などが一堂に会す、見ごたえある展示です。

赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい)(梅鶯飾うめうぐいすかざり)
鎌倉時代・13世紀 春日大社 展示期間:1/17(火)~2/19(日)

力強くきらびやかで、これぞ甲冑!と言いたくなる日本甲冑の傑作、赤糸威大鎧。なんだか見たことあると思いますよね?こちらはなんと、五月人形の兜のモデルになっているのだそうです。日本一有名な甲冑とも言えます。

黒韋威伊予札胴丸(くろかわおどしいよざねどうまる)
南北朝~室町時代 14世紀 春日大社 展示期間:1/17(火)~2/19(日)

こちらは黒が強い印象を与える甲冑。赤糸威大鎧とならんで国宝に指定されています。

春日大社にはこの他に2つの国宝に指定された甲冑があります。こちらの展示は2月14日から。すなわち、2月14日から2月19日の1週間だけ、4体の甲冑が一堂に会します。甲冑ファンならずとも見ておきたい迫力の展示です。

甲冑のほか、武士には欠かせないアイテムである刀剣も数多くあります。

沃懸地酢漿紋兵庫鎖太刀(いかけじかたばみもんひょうごぐさりたち)
鎌倉時代・13世紀 春日大社 展示期間:1/17(火)~2/12(日)

帯取に鎖を用いて太刀を収めた刀装を「兵庫鎖太刀」といいます。公家や武家に好まれ、神社への奉納品としても用いられていました。力強くも優美な刀剣は、鞘、刀身ともにじっくりと見ていたくなる一振です。

武具のコーナーを抜けると、春日大社に実際に奉納された灯籠が飾られています。幻想的な雰囲気を醸し出しています。

この場所では、毎年2月と8月に春日大社で行われる万燈籠が再現されています。この写真の前に立って、記念撮影もできます!

第5章 神々に捧げる芸能

ここでは祭礼の際に神前に奉納された舞楽や能など、芸能に関わる作品が紹介されています。

舞楽面 納曽利なそり(写真左)
平安時代・12世紀 春日大社 通期展示

祭りの際に神の前に奉納する舞で用いられるお面です。納曽利は龍が舞い、遊ぶ様を表したとされる舞です。舞の動きに合わせて目や顎が動き、表情に変化が出る仕組みです。

春日大社では年間を通して多くの神事や祭りが行われていますが、その中でも12月に行われる「若宮おん祭」は国の重要無形民俗文化財に指定されている重要な祭祀です。若宮と呼ばれる神様を本殿にお呼びする儀式は、平安の昔から途絶えることなく続いているものです。かつては伊勢神宮も、遷宮の際に同様の儀式を行っていたと伝わっています。

この巨大な太鼓は「鼉太鼓(だだいこ)」といい、神事の際に音楽を奏でる太鼓です。こちらには龍が描かれていますが、もう1つ、鳳凰が描かれた太鼓と対になっています。この太鼓は複製で、春日大社には源頼朝が寄進したとされるものがあります。

第6章 春日大社の式年造替

春日大社では、社殿の建て替えや修繕が20年に一度行われます。これを式年造替といい、平成28年に迎えた式年造替は60回目を数えました。この章では式年造替に関わる記録とともに、今回の式年造替で徹下、すなわち役目を終えて神殿から降ろされた獅子・狛犬などが展示されています。

獅子・狛犬(しし・こまいぬ)
鎌倉時代・13世紀 春日大社 通期展示

4対8体の獅子・狛犬は、春日大社の第一殿から第四殿までを守っていたものです。こちらは第一殿を守っていた獅子・狛犬です。

こちらは第二殿にいたもの。4対を見比べると、顔も体もだいぶ違います。どの獅子・狛犬が好きかな?と思いながら見るのも面白いですよ。

展覧会限定グッズもチェック!

ミュージアムショップでは、展覧会限定のグッズが多数販売されています。

展覧会オリジナルのゆるキャラ、「ニャデンとチュン」「シカスガさん」「シシコマくん」が描かれたグッズも登場。ちなみに「ニャデンとチュン」は、金地螺鈿毛抜形太刀の「螺鈿」、そして猫が雀を追う姿に着想を得ています。ゆる~い雰囲気がたまらない…。

春日大社由来のお神酒や、奈良の銘菓なども販売されています。

国宝が描かれたクリアファイル。まばゆい雰囲気に、持っているだけで運気が上がりそう?

気になるグッズがたくさんあるので、買いすぎ注意です!

今しか見られない、お宝が勢揃いした見応えたっぷりの展示です。展示替えもあるので、前半と後半で2回訪れてみてもいいかもしれません。千年の昔にタイムスリップできますよ!

開催概要
名称:特別展「春日大社 千年の至宝」
会期:2017年1月17日(火)~3月12日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
所在地:東京都台東区上野公園13−9
拝観時間: 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
料金:一般1,600円、大学生1,200円、高校生900円 ※中学生以下は無料
電話番号:03-5777-8600
公式サイト:http://kasuga2017.jp/

取材・撮影・文:藤井みさ

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